50代独身の資産運用|データで考える老後資金と「まだ間に合う」計画の立て方
50代を迎え、キャリアも一段落したところで、ふと「老後の生活、このままで大丈夫かな?」とお金のことが気になり始めるのは、ごく自然なことです。
特に、頼れるパートナーがいない単身者の場合、その不安はより切実なものかもしれませんね。
物価の上昇や円安が続くいま、何もしなければ、大切に貯めてきたお金の価値が少しずつ目減りしてしまう可能性もあります。
結論からいうと、50代の今、ご自身の状況を客観的なデータで把握し、将来に向けた具体的な計画を立てることが、漠然とした不安を解消する鍵となります。
この記事は、特定の金融商品を勧めるものではありません。
公的なデータや専門家の知見に基づき、50代の単身者がご自身の状況に合わせて、納得のいく資産形成を考えるための「判断材料」を提供するものです。
- 平均寿命や老後の生活費など、老後資金を考える上での客観的なデータ
- 50代からでも遅くない、税金で有利になる制度(NISA・iDeCo)や運用の基本
- ご自身の考え方に合わせた資産配分のヒント
- 50代の資産運用で失敗しないための5つの重要ポイント
【データで見る】50代独身の「お金の現実」と向き合う
まず、資産運用を考える前に、今の50代独身の方が置かれている「お金の現実」を客観的なデータで見ていきましょう。
厳しいと感じる数字もあるかもしれませんが、現状を正しく知ることが、具体的な計画を立てるための第一歩です。

現実1:平均寿命から考える「老後の長さ」
「人生100年時代」といわれますが、実際、私たちはどれくらい生きる可能性があるのでしょうか。
厚生労働省のデータによると、2022年時点での日本の平均寿命は男性が81.05歳、女性が87.09歳です。
しかし、これはあくまで「0歳時点での平均余命」です。
50歳まで生きてきた方は、それ以降も生きる可能性が高くなります。
同じく厚生労働省のデータから50歳時点の平均余命を見てみると、
- 50歳男性:平均であと「32.36年」生きる(→82.36歳)
- 50歳女性:平均であと「37.95年」生きる(→87.95歳)
という結果が出ています。
つまり、50代の今から考えても、老後の生活は30年以上の長期戦になる可能性が高い、ということです。
現実2:単身者の老後に必要な「生活費」はいくら?
では、その長い老後を過ごすために、どれくらいの生活費が必要になるのでしょうか。
総務省の家計調査(2023年)によると、65歳以上の単身無職世帯の1ヶ月の平均的な支出は「157,662円」です。
ただし、これはあくまで平均的な生活水準の場合です。
生命保険文化センターの調査では、「ゆとりある老後生活」を送るためには、平均で月額「37.9万円」が必要という結果も出ています。
もちろん、必要な金額は個人のライフスタイルによって大きく変わります。
ご自身の現在の支出を参考に、「老後はどんな暮らしをしたいか」を具体的にイメージしてみることが大切です。
現実3:50代独身のリアルな「貯蓄額」
周りの同年代の人は、どれくらい貯蓄があるのでしょうか。
金融広報中央委員会の調査(2023年)によると、50代単身世帯の金融資産保有額(預貯金や有価証券など)の平均は「1,375万円」です。
一方で、一部の富裕層が平均値を引き上げているため、より実態に近いとされる中央値は「100万円」となっています。
このデータから、貯蓄がほとんどない層と、しっかりと準備している層の二極化が進んでいる様子がうかがえます。
現実4:年金だけで老後資金は足りるのか?
老後の収入の柱となる公的年金は、どれくらいもらえるのでしょうか。
厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」(令和4年度)によると、国民年金(老齢基礎年金)のみの平均受給額は月額約5.6万円。
会社員や公務員だった方が受け取る厚生年金(国民年金を含む)の平均受給額は、月額約14.4万円です。
先ほどの平均的な支出(約15.7万円)と比較すると、厚生年金だけでは毎月赤字になる可能性が見えてきます。
これらのデータから分かるのは、公的年金だけで「ゆとりある老後」を送るのは、簡単ではないかもしれない、という現実です。
平均値などのデータを見ると、ご自身の状況と比べて一喜一憂してしまうかもしれません。しかし、大切なのは「自分は自分」と割り切り、これらのデータをあくまで計画を立てるための「きっかけ」として捉えることです。
私たちがお手伝いしてきた多くの方も、最初は漠然とした不安を抱えていらっしゃいました。しかし、ご自身のキャッシュフロー(お金の流れ)をきちんと把握し、将来の目標を具体的にすることで、やるべきことが明確になり、前向きな一歩を踏み出されています。まずはご自身の現状を客観視することから始めましょう。
【50代からでも遅くない】今すぐ始めるべき資産形成の基本
厳しいデータを見て、少し不安になってしまったかもしれません。でも、ご安心ください。
50代からでも、将来に向けた資産形成を始めるのに、遅すぎるということはありません。
ここでは、50代の資産運用で特に押さえておきたい3つの基本をご紹介します。
基本1:税金の優遇を最大限に活用する(NISA・iDeCo)

国が用意してくれている、税金がおトクになる制度を使わない手はありません。
特に「NISA」と「iDeCo」は、50代からの資産形成で頼りになります。
NISA:生涯使える非課税制度
NISAは、投資で得た利益(配当金、分配金、譲渡益)が非課税になる制度です。
通常、投資の利益には約20%の税金がかかりますが、これが一切かからなくなります。
- 非課税保有限度額(総枠): 1,800万円
- 年間投資枠: つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円(合計最大360万円)
- 特徴: いつでも引き出し可能。枠の再利用もできる。
50代から始めても、たとえば毎月5万円を15年間積み立てれば、900万円を非課税枠で運用できます。
iDeCo:老後資金に特化した強力な節税制度
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、老後資金を作ることに特化した年金制度です。
- 掛金が全額所得控除: 毎月の掛金が所得から差し引かれ、所得税・住民税が安くなる。
- 運用益が非課税: NISAと同様、運用で得た利益に税金がかからない。
- 受け取り時も控除: 年金または一時金で受け取る際にも、税金の優遇がある。
ただし、原則60歳まで引き出せないという注意点があります。
しかし、見方を変えれば、確実に老後のための資金を確保できる制度ともいえます。
NISAとiDeCo、どちらを優先すべきか迷われる方も多いです。50代の方の場合、まず優先したいのは、いつでも引き出せる流動性の高さと、生涯にわたる非課税枠のメリットがある「NISA」です。
一方で、iDeCoの「60歳まで引き出せない」という特徴は、意思の力だけではついお金を使ってしまいがちな方にとって、強制的に老後資金を確保できるという大きなメリットにもなります。また、掛金が全額所得控除になるため、現役時代の所得税・住民税を軽減する効果は非常に大きいです。
ご自身の年収やライフプランに合わせて、まずはNISAで土台を作り、余裕があればiDeCoも活用するというハイブリッドな考え方がおすすめです。
基本2:「長期・積立・分散」投資の王道を徹底する
投資と聞くと「難しそう」「リスクが怖い」と感じるかもしれませんが、大切なのは3つの基本原則を守ることです。

- 長期
短期的な価格の変動に一喜一憂せず、長い目で見て資産の成長を目指します。時間を味方につけることで、複利の効果(利益が利益を生む効果)も期待できます。 - 積立
毎月決まった額をコツコツと買い続ける方法です。価格が高いときには少なく、安いときには多く買うことができるため、購入価格が平準化され、リスクを抑える効果があります。 - 分散
値動きの異なる複数の資産(例:国内外の株式、債券など)や地域に分けて投資することで、どれか一つが値下がりしても、他の資産でカバーし、全体のリスクを安定させる考え方です。
この3つを徹底することが、投資で大きな失敗を避けるための王道といわれています。
基本3:リスク許容度を正しく理解する
「どれくらいのリスクなら受け入れられるか」というご自身の「リスク許容度」を把握することは、資産運用を始める上で大切です。
リスク許容度は、年齢、収入、資産状況、投資経験、そして性格などによって一人ひとり異なります。
- リスク許容度が高い人: 多少の値下がりは気にせず、積極的なリターンを狙う。
- リスク許容度が低い人: 元本割れの可能性はできるだけ避け、安定的な運用を好む。
まずは、ご自身がどちらのタイプに近いかを考えてみましょう。このリスク許容度に合わせて、次に説明する「資産配分」を決めていくことになります。
【自分に合った配分は?】資産配分(ポートフォリオ)の考え方

「長期・積立・分散」を実践する上で、具体的にどんな資産をどれくらいの割合で持つか、という計画が「資産配分(ポートフォリオ)」です。
なぜ資産配分が重要なのか?
資産運用の成果の約9割は、この資産配分で決まるといわれるほど、重要な要素です。
どんなに優れた金融商品を選んでも、ご自身のリスク許容度に合わない資産配分を組んでしまうと、値動きに耐えきれず、途中でやめてしまうことになりかねません。
資産配分の具体例
一般的に、リスクとリターンは表裏一体の関係にあります。
- 株式: リスクは高いが、大きなリターンが期待できる(ハイリスク・ハイリターン)
- 債券: リスクは低いが、リターンも限定的(ローリスク・ローリターン)
この2つの資産の割合をどうするかで、ポートフォリオの性格が決まります。
安定重視型(リスク許容度が低い方向け)
- 国内債券70%、国内株式30%
- 値動きを極力抑え、着実に資産を守りながら少しずつ増やすことを目指す。
バランス型(一般的な方向け)
- 国内債券30%、国内株式20%、外国株式30%、外国債券20%
- 国内外の資産にバランス良く分散し、安定性と成長性の両方を狙う。
積極型(リスク許容度が高い方向け)
- 国内株式20%、外国株式80%
- 大きなリターンを目指し、株式を中心に積極的にリスクを取る。
これらはあくまで一例です。大切なのは、ご自身が安心してつづけられる配分を見つけることです。
書籍やインターネットで紹介されている資産配分は、あくまで一般的なモデルケースです。これをそのまま真似するだけでは、ご自身の本当のリスク許容度や価値観に合わず、長続きしない可能性があります。
例えば、同じ50代独身の方でも、「退職金が見込めるか」「親からの相続の可能性があるか」「今後、大きな支出の予定はあるか」など、状況は千差万別です。
大切なのは、これらのモデルを参考にしつつ、ご自身の状況と「どう生きたいか」という想いを掛け合わせ、「自分だけの最適な答え」を導き出すことです。このプロセスこそが、納得感のある資産形成につながります。
コア・サテライト戦略でリスクを管理
もう少し応用的な考え方として、「コア・サテライト戦略」も役に立ちます。
- コア(核)部分
資産全体の70〜90%を、インデックスファンドなどで長期的に安定したリターンを目指す。 - サテライト(衛星)部分
残りの10〜30%で、応援したい企業の株式や、新しい技術分野の投資信託など、少しリスクを取って積極的なリターンを狙う。
このように、守りの資産と攻めの資産を分けることで、リスクを管理しながら、投資を楽しむ余裕も生まれます。
【50代独身者が失敗しないために】押さえておきたい5つの重要ポイント

最後に、50代独身の方が資産運用で失敗しないために、特に心に留めておきたい5つのポイントを解説します。
1. まずは「生活防衛資金」を確保する
資産運用を始める前に、「生活防衛資金」を確保しておくことが大切です。
これは、病気やケガ、失業といった不測の事態に備え、当面の生活に困らないためのお金です。
目安としては、生活費の半年〜1年分を、すぐに引き出せる普通預金などで確保しておくと安心です。
このお金があることで、いざというときに投資資産を取り崩さずに済み、精神的な余裕を持って運用をつづけることができます。
2. 「手数料(コスト)」の低い金融商品を選ぶ
長期的な資産運用において、手数料(コスト)はリターンを確実に押し下げる要因になります。
特に、投資信託を保有している間、ずっとかかりつづける「信託報酬」は、わずか数%の違いでも、10年、20年という期間で見ると大きな差になります。
金融機関が勧める商品が、必ずしもあなたにとってベストとは限りません。
「信託報酬が低いか」という視点で、商品を選ぶクセをつけましょう。
3. 無理のない金額から始める
「老後資金のために」と意気込みすぎて、生活に負担がかかるほどの金額を投資に回すのは禁物です。
まずは、月々1万円など、ご自身が「このくらいならなくなっても生活は大丈夫」と思える無理のない範囲から始めましょう。
積立投資は、一度設定すれば自動的に買い付けを行ってくれるので、最初のハードルを越えれば、あとは淡々とつづけることができます。
4. 分からないものには手を出さない
世の中には、仕組みが複雑で理解が難しい金融商品もたくさんあります。
「よく分からないけれど、儲かりそうだから」といった理由で安易に手を出すのは、失敗のもとです。
ご自身が内容を理解し、納得できる商品だけに投資することを心がけましょう。
特に、「元本保証」「高利回り」をうたう話には、詐欺のリスクも潜んでいるため、十分な注意が必要です。
5. 最後は「自分で決める」という意識を持つ
一人で資産運用を考えるのが不安なときは、FP(ファイナンシャルプランナー)やIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)といった専門家に相談するのも一つの方法です。
客観的な視点から、自分では気づかなかった問題点や、より良い方法を提案してくれるでしょう。
ただし、どんな専門家のアドバイスも、あくまで参考意見です。
最終的にどうするかを決め、その結果に責任を持つのは、他の誰でもないあなた自身です。
「専門家が言ったから」と鵜呑みにするのではなく、提案内容をしっかり理解し、納得した上で判断する姿勢が大切です。
資産運用の道のりは長く、時には市場の変動で不安になったり、ご自身の判断に迷ったりすることもあるでしょう。そんなとき、気軽に相談できる専門家がそばにいれば、精神的な支えになります。
特に、私たちのような特定の金融機関に属さないIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)は、お客様の利益を第一に考え、中立的な立場から幅広い選択肢をご提案できるのが強みです。
単に商品を売るのではなく、お客様の人生に寄り添い、長期的な視点で伴走する。そんなパートナーを見つけることが、50代からの資産運用を成功させる上で、実は非常に重要なポイントなのかもしれません。
50代独身の資産運用は「計画」が大切。不安を解消し、次の一歩へ
この記事では、50代独身の方が資産運用を考える上で知っておきたい客観的なデータから、具体的な運用の基本、そしてご自身の考え方に合わせた資産配分のヒントまでを解説してきました。
厳しいデータもあったかもしれませんが、大切なのは、漠然とした不安を具体的な「計画」に変えていくことです。
50代は決して遅すぎるスタートではなく、「長期・積立・分散」の原則を守り、NISAやiDeCoといった制度を賢く活用すれば、着実に未来への備えを築いていく一助となります。
- 人生100年時代、老後は想像以上に長くなる可能性を覚悟する
- 公的年金だけでは「ゆとりある老後」は難しいかもしれない
- 50代からでもNISAやiDeCoの活用は十分に有効
- 資産配分は、まずご自身の「リスク許容度」を知ることから始める
- 「生活防衛資金の確保」と「手数料の低さ」が重要なポイントです
私たちフィナンシャルクリエイトは、特定の金融機関に属さない中立的な立場で、お客様一人ひとりの状況に合わせた資産形成のサポートをしています。
「自分に合った資産配分が分からない」「誰に相談していいか迷っている」という方は、ぜひ一度、私たちの無料相談をご活用ください。
- 商号等:株式会社フィナンシャルクリエイト
- 金融商品仲介業者 関東財務局長(金仲)第845号
- 各商品等にご投資いただく際には商品毎に所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。 又、各商品等には価格の変動等による損失を生じる恐れがあります。各商品等へのご投資にかかる手数料等およびリスクについては、当該商品等の契約締結前交付書面、目論見書、お客様向け資料等をよくお読みになり内容について十分にご理解ください。
この記事を書いた人
占部 義弥(埼玉支店長)
資産運用コンサルティング、保険提案、家計管理の改善を得意とするファイナンシャルアドバイザー。これまでに新規・既存問わず500名以上の顧客を担当し、課題整理から最適な資産設計まで一貫してサポートしてきた実績を持つ。埼玉エリアの支店展開マーケティングを3年間担当し、地域に根ざした相談体制の構築にも尽力。ラジオ局「NACK5」へのレギュラー出演を通じ、資産形成や保険選びの正しい知識をわかりやすく発信している。